忘れないために、私の病気と彼とのこと。

先週の月曜日、つまりは7/13から鼻水が止まらなかった。

鼻水以外に、時折出る咳以外は特に何も気にならず、夏風邪かなと思っていた。

7/14(火)、体調が治らず、少ししんどいことにかまけて、会社を休むことに決めた。

上司に休みの伺い立て電話をするも、「休むなら、今日1日で直してよ」と圧力をかけられ、電話を切った後、これだから休みにくいのだ、とぶつぶつこぼす。

でも、休みは休みなのだ。
7月分は頑張ったし、今日だけは休息しようと決め込む。病院行かないとなーと思っている間にウトウトしてしまい、起きると午前の診療時間を過ぎており、午後も同じようにやり過ごしてしまった。

せめてもと思い、日も暮れた涼しい時間に薬局に足を伸ばして、特に鼻水に効く総合風邪薬を購入し、食欲もないが無理やり食事をして服薬。

7/15(水)、起きても身体がだるい。夏風邪は長引くって言うしなー。仕方ないか、みんなにうつさないようにしようとマスクをして通勤。この季節にはちょっとしんどい。

一緒に住んでいる恋人は、午後休を活用して遊びに出ている。車で行ったから、終電は関係ないが遅くとも、帰っては来てくれるだろう。朝、出て行く時にも、お酒は飲まないから、と言っていたし。

仕事から帰宅し、スーツのまま倒れたい気持ちをなんとか抑制して、部屋着に着替える。間もなく布団にダイブ。

ウトウトしてたらすっかり夜だった。恋人はまだ帰ってきていない。22時半。まだ友達と盛り上がってる頃だろうか。

しかし少々心細過ぎる。3分でも、いや、1分でもいいから、少しだけ声聞きたいな。でも、友達との時間にお邪魔するのも気がひけるし...と、こちらの心細さも伝えきれない間に彼からのLINEが入る。

「ごめん。結局飲んじゃった。朝帰る。」

すねてはみたが、私らしくないかと思い、「楽しんでね、おやすみ」と返信する。

ちょっと暑いなと思い、念のため体温計を出してみる。うーん、微熱。暑いのではなく、熱いのだ。風がない夜というのもあいまって、寝付けず、布団の上でもぞもぞしていたら、あることを思い出した。

薬。昨日買った薬を、今日はまだ飲んでいない。せめて寝る前には薬を飲んでから、飲んでから寝よう、と呪文を唱えるも、動く気にならず。唸っていると、気の知れた友人からLINE。

ナイスタイミング。友人からのLINEの内容はスルーして、「ご飯食べて薬飲んで寝なさい、と私に言ってください」と唐突なお願いをしてみる。素直で優しい友人は、「ご飯食べて薬飲んで寝なさい」と、そのままLINEを送ってくれ、「わかった、ありがとう」と私は起き上がる。

コンビニで病人らしく、おかゆやゼリー、水やポカリスウェットを大量に購入し帰宅。友人は心配してくれたが、こちらは病人ごっこしてるだけだよ、大丈夫だよと笑い飛ばしておく。それから、おかけで食糧買えました、食べて薬飲んで寝ますと。

7/16(木)、天気予報のお姉さんは、今日明日で台風が来ると言っている。朝6:30。恋人はまだ帰って来ていない。先を読んで、時間にはゆとりをもって動く人だが、普段起きる時間になってもまだ帰ってこない。

もしかして起きてないのではと思い心配してLINEをいれる。2,3分待っても、既読にならない。帰路の運転中なら、10秒もしない間に既読になるはずだ。まだ起きてないのか?でも私も自分の支度があるし、かまっていられない。

まだしんどいままの身体を起こして、昨日買い込んだゼリーのひとつを朝ごはんに食べる。そして、薬を飲む。恋人が帰って来たときのことを考えて、メモでも書いて置いておこう。

楽しかったかな?
行ってきます。
あなたも気をつけて、
いってらっしゃい。

ほんとは、「昨日はさみしかったよ」とか、「朝くらいは会いたかったよ」とか、書いてやろうかと思ったけど、そんなことをして彼をせめても仕方のないことだと、思いとどまる。

私に友人関係があるように、彼にも色々人付き合いと言うものがあるのだ。誰と会ってたか、何人だったか、どこに行ってたかなんて、気にしても仕方のないことで。疑い始めたらキリがないし、嘘なんて、なんとでも言えてしまう。

こういう時は、知っている事実だけをそのまま認めて赦すのが、お互いハッピーなのだ。私はそれを知っている。

職場に着いて間もなく、彼からのLINE。

「ごめんな。大丈夫。時間はやばいけど。笑 ありがと。」

こいつ、こっちの気も知らずに、とは思ったが、昨日が一番しんどかったことは、彼には伝えていないし。お酒を飲んで帰れなくなった彼に、こちらが何を言っても、彼はただただ心配して、ただただもどかしいだけだろうから。

ムカつくから返信せずに、既読スルー。仕事に打ち込む。一向に良くならない体調。さすがにおかしいなと、午後の仕事を早めに終わらせて一旦帰宅。病院へ行くため。

重い仕事の荷物をうちに持って帰り、部屋の様子を見渡してみる。うーん、変化は1つ。彼の仕事用の上着がなくなっているだけだ。シャワーを浴びた形跡もなく、仕事用の腕時計すら置いたまま。代わりに、仕事には使わないからと目をキラキラさせて言っていた私がプレゼントした腕時計がない。

今朝私が書き認めたメモにも、変化なく。悲しくて虚しくて、メモをくしゃくしゃにして、わざと机の上に置いておく。知らない知らない。私はそれより、病院に行くの。

待合室で、彼から謝罪のLINEが来ていることに気付く。何を謝ってるのか、この人は。私の苛立ちの原因を果たして知っているのだろうか。勝手に、やっと、私のことが、いや、私とのことが心配になったのか。

連続して、彼からLINE。
「今日は早く帰れる。ご飯いる?」

謝罪には触れずに、返信する。
「病院にいる。夕飯はいらない。」

早上がりはしたが、夜ご飯は友人と予定があった。なかなか会えない友人だったから、少し無理してでも会いたかった。

彼から、りょーかい、と気の抜けた返信。

ムカつくが、以前彼が言っていた言葉を思い出す。心配するのはこっちの勝手だけど、心配はかけるな、と。

思い直して、彼にLINEする。

「病院は診察して薬もらって帰るつもり。夜ご飯は食べてくるけど、そんなに遅くならない予定。21時半とか。」

なんだか色々なことが面倒になってきた。今まで気にならなかった彼のあらゆる弱点が、ボコボコと泡のように現れて、どんどん膨れ上がってくる。

私が気にしないようにしていただけか。気になってるのに、今、楽しいし、と見ないふりしてただけか、と気付かされること多数。

「夕飯の約束終わったら、駅まで迎えに行くよ」と彼からのLINE。来てくれるなら楽チンだしと、お言葉に甘えて、駅到着時間を連絡する。

いつものところに停めてある彼の車に乗り込み、他愛のない会話。それから、他愛のない会話。そして、他愛のない会話。車内でも、帰宅しても、他愛のない会話。作業のようにそれぞれシャワーを浴びて、髪を乾かして、布団に潜り込む。

何か話したそうな彼とは一度も目も合わせず、ここまできた。あとは、おやすみだけ。何も話したくない。

彼が口を割る。

「あのさ、ちょっと、話してもいい?」

明らかに嫌な顔もできない私は、断れなく、うんいいよ、と返事をする。

始まった言い訳。どうでもよかった。それより、私は体がしんどくて、早く寝たかった。彼は結局自分を守りたいだけなのだ。私の体調より、自分の不安を消し去りたいのだと、更にがっかりしてしまった。

2時間ほど、言い訳とその所感を述べる話し合いをしたところで、私が黙った。

「寝た?」

彼が少し怒り気味で言う。

「寝てない」

私は食い気味で返す。もう黙るしかなかった。何も言いたくなかった。これ以上、精神的にも身体的にも負荷をかけたくなかった。どうやってこの話し合いを一旦終わらそうか。また明日に持ち越すのも嫌だけど、でも今日はもうちょっとしんどい。どうしよう、何て言おう。。

私が迷っていると、不意に聞こえてきた、寝息といびき。彼は寝ていた。

呆れる。ありえない。

リビングに自分の枕と掛け布団と目覚まし時計を持って避難する。仮設ベット、と言うか、毛布を2枚引いただけの、簡易敷き布団に横になる。もういいや、おやすみと胸中で言って、瞼を閉じる。

やっと、寝れる。

ごちゃごちゃ考えているせいでうまく眠りの世界に入れない。浅いところで夢と現実との世界を行ったり来たりしていたら、彼の声がした。

「体調悪いときくらいは、寝やすい布団でちゃんと寝てくれよ」

はぁー?なにそれ、そっちが先にいびきかきはじめたんじゃんー!と内心殺気立ったけど、そんな気持ちは押し殺して、起き抜けの声で言う。

「ごめんね」

あれ?私が悪いのかな。まぁいっか、眠たいよ、眠りたいよと思いつつ、彼がなんだかんだと騒ぎ出す。言い合っていたら、感情的になった彼が玄関を開け、部屋を出て行った。

まぁ、タバコでしょう。タバコなんて吸っても状況は何も変わらないことくらいわかるだろうに。意味がない。ただ、逃げてるだけの自分が恥ずかしくないのかな。

しばらくしたら帰ってくるに違いない。これだからずるいよな。車もあるし、実家も近所だし。あなたには落ち着ける居場所がいくつもあるのよ。私にはここしかないの。ここが安らぎのない場所なら、どこで休めばいいのよ。もーめんどくさい。休ませてよ、頼むから。

彼が寝室で寝ろと言っていたから、だるい身体を起こしてまた寝室に移動する。

昨日もあんなにさみしかったのに、また今日もひとりで寝るのかぁ。ありえないな、なにがしたいんだろう彼は本当に。自分のことしか考えられなくなっちゃったのかな。

すねてる場合じゃないから早く帰って来なさいと彼にはLINEを連投して促す。どこまで負んぶに抱っこなの、いい加減しっかりしてよと、眠い目をこする。

ガチャリと玄関が開いて、ごめん、と彼が言う。

あーもうどうでもいいから寝ますよおやすみと言いたい気持ちを抑えつつ、暗い部屋に向かって言う。

「うんうん、いいから、もう今日は寝よう、私、ちゃんとこっちに移動しといたからさ。明日も仕事だし、あなたは週末も休みなく仕事だし、もう寝ないと。あなたが昨日何時まで起きてたかは知らなし眠くないのかもしれないけど、私はもう眠たいよ」

ゴソゴソと彼が寝支度をしている音が聞こえる。だんだん私の重たい瞼がやっと落ち着いて閉じてくれて、意識が少しだけ遠くなった頃、彼の声が遠くで聞こえる。うーん、たぶん、おやすみ、って言ってる気がする。

7/17(金)、もう覚えていない。確か、夜にまた彼の言い訳を聞いて、私はこの先どうしようと考えていた。と、思う、たぶん。

7/18(土)〜7/20(月)、世間は3連休。体調は治らないまま、仕事したり、友達と会ったりした。

月曜日の午後は、ふたりとも予定が空いていたけど、家にいたくなくて、彼には「今は一緒にいない方がいい気がするから、出掛けるね」と言って、友人の家に避難した。

19時半頃、家に帰ったけど、気が乗らず、昨日までの延長戦で、平行線だった。

7/21(火)〜7/23(木)、覚えてないけど、大きな変化なし。体調も良くならないまま、普通に仕事して、帰宅して。たしか23(木)に、病院でもらった薬が切れた。

7/24(金)、朝からだるくて仕事にならなかった。関節も痛い。ダメだ、早く帰ろうと思うも、金曜日は夕礼があった。早く抜けれて、17時か。

金曜日は、一週間の活動報告を上司へするルールだったけど、同僚たちの順番を待っていられなかった。同僚との対話中に上司に目配せして、気を引く。

「すみません、病院行きたいので、もう出ます。」

「えっ?今から?大丈夫?報告は?」

とかとかなんとか言われたけど、また報告しまーす、と言い捨てオフィスを出る。

重い荷物を道端に捨ててしまいたい衝動に駆られつつ、帰路につく。あっという間に病院についた。いや、所要時間はいつもと変わらない。自分の意識が飛んでいただけだ。それでも、降りなきゃいけない駅できちんと意識がはっきりする自分をほめる。

「薬も切れたし、症状が治らないので、なんらかの検査をお願いできますか?」

受付の、いつも高圧的なお姉さんに訴えてみる。どうしてこう弱っている患者に対して、高圧的な必要があるだろうか。

母親のような包容力とユーモアのある、はたまた、うなじのキレイなお姉さんあたりにならないだろうかと不毛な妄想をしていたら、看護師さんが自分の名前を呼んでいる声がする。

血圧、それからレントゲンをとって、しばらく待つ。今度は、先生のいる診察室に案内される。

「ココ、白くなってるの、わかる?」

嫌な予感。レントゲン写真には、確かに食道かそこらへんが白くなって枝分かれしているのが見える。

「これね、気管支肺炎だよ。今、気管支が真っ赤になって、炎症しているの。大変だったね、しんどかったね。免疫が落ちてるのかな、もしかして寝れてない?お話するお仕事なのかな。あんまり無理しちゃダメだよ。これからのことだけど、毎日通院して、抗生物質を点滴しようね。入院じゃないから、上司もきっと許してくれると思うけど。毎日いつもより少し早く上がってくることはできる?うーん、今日から2週間、毎日ね。ここは、日曜はやってないから、日曜だけ近くの大きい病院にお願いしとくから。それから、念のためCTも撮りたいの。胸と首ね。それも大きな病院でやってもらえるように予約したいんだけど、平日どこかで休めそうかな、休んでもらわないと困るんだけどね。それから、今日は採血して、点滴ね。また看護師さんから詳しい話はしてもらうから、ちゃんと聞いてね。じゃ、いいよ、待合室で待っててね」

先生の言っていることが、よくわからなかった。言いまくしたてられた訳でもないのに、全然理解できなかった。微熱でぼーっとするからかな。単語単語の意味はわかるの。え、結局なんだったっけ、えーと、気管支肺炎...?

看護師さんに呼ばれてベッドに横になり、言われるがまま採血され、点滴を打たれる。春が過ぎたら夏が来る。それと同じくらい自然なことのように、処置が進んでいく。

看護師さんが説明してくれる。土日の対応、大きい病院の場所と行き方、今後の予定。えーっと、で、私は毎日通院して点滴するのね、平日も土日も予定いっぱい詰まってるのに、どうしよう、仕事と遊びと。えーと、えーと。だんだん冷静になってくる。

そうだな、予定より、今だ。優先するのは、まず、自分の命だ。これからの仕事と遊びの予定は、ずらせばいい。来週は夕方から夜の予定がいっぱいだ。CTの日は先輩との同行があったな。上司に報告して、お客様や先輩にも予定をずらしてもらおう。

それから、心配してくれてる友人にも伝えておこう。彼には、うーん、伝えておくべきか。家族には言わなくていいかな。あえて言って心配かけても仕方ないし。

彼に電話する。彼は「病名聞くとやっぱり心配になるね」と言った。

あー、もういいや。私としては、一昨日も昨日も今日も、何も変わらないのよ。名前がついたからって突然心配しないでくれる?都合がいいのよ、ホント。病名聞いて、やっとわかったの?と、内心思ったけど、怒る気力もなく、まぁ、そういうことだわ、と電話を切った。

帰宅した家では、同じような会話をもう一度繰り返し、呆れ疲れて寝た。

7/25(土)、2度目の点滴。1回目の点滴は右手で、点滴をしている20分が退屈だった。今日は左手にお願いした。点滴をする腕は、点滴中、曲げれない。スマホでLINEやゲームをして暇をつぶすには、利き手が自由な方がいい。不自由になって、初めて気付く。スマホは、肘を曲げて持っているのだ。

昨日とは違う点滴室というところに案内され、どうぞー、と言い放ち、看護師さんはどこかへ行ってしまった。私より先に点滴室に案内されている婦人が目の前の椅子に座っている。複数の椅子があったから、私は勝手かわからず、あのー、と婦人に声を掛ける。

「どこに座ったらいいとかありますか?」

「あー、いいのよ、適当に、座りたい椅子に座れば」

感じのいい、でも、無関心な人の返事だった。ありがとうございます、とボソボソ言って、婦人の隣の椅子に座った。パーテーションがあるから、婦人が視線には入ることはない。

看護師さんが来て、私の方から処置を始める。他愛のない会話と、明日以降の事務連絡。私の処置が終わり次第、婦人の処置を始める。やはり、他愛のない会話。エアコンが寒く、看護師さんと婦人の会話を割って、エアコンが寒い旨を伝える。

帰宅して、買い物にとショッピングモールをぶらつく。友人から連絡。

「お昼食べよー」

できるだけ日光には当たりたくなく、呼びつける。30分かけて友人は現れて、ショッピングモールのフードコートで一緒にご飯を食べる。

あなたへの誕生日プレゼントを買うつもりだったのに、あなたがいたら買えないじゃないの、と内心ぶつぶつ。でも、一緒にいてくれた方が気が紛れていいかも。

「注射嫌いんだよねー。CTも初めて!でも、やらなきゃならないし、やったことないことだし、楽しむ!」

と、無理をしている私に、友人は、それを知ってか知らずか、明るく励まし続ける。

救われるなー、と、思いつつそのままぶらぶらと時間をやり過ごす。

夜はそれぞれ予定があったからバイバイして、予定をこなして、帰宅。

恋人は相も変わらず、たいした話も心配も励ましもなく、いや、もしかしたらそれらはあるのかもしれないけど、私が気付けないレベルの、そんな会話をしてそれぞれ寝支度。

彼はリビングで。
私は寝室で。

昨日、病院の先生に「免疫が落ちてるのかな、寝れてない?」と言われたことを彼に話していたから、自分のいびきを気にして、点滴が終わるまでは別々で寝ようと昨日提案された。

昨夜、気付いたことだが、リビングと寝室の間の扉を閉めてしまうと、風通しが悪い。

それと、正直少しだけ心細いからと、今日は15センチだけ隙間を空けて、それぞれの寝床についた。

しばらくして聞こえてくるいびき。ごめん、やっぱり心細いっていうのは、なし。おやすみ。と隙間を閉じる。

暑いけど我慢して寝る。

7/26(日)、今日は日曜だから、大きい病院で点滴。予約してても救急扱いだから、処置レベルが点滴の私は、どんどん後回しにされる。それでも30分遅れで処置が始まったかと思えば、不慣れな看護師さんが、対応してくれる。一生懸命なのはいいけど、自分が患者の立場だったらどんな気持ちになるかわかる?ねぇねぇ、ホスピタリティーって知ってる?と聞きたくなった。

アルコールがかぶれるかどうかも聞かず、針を刺された私が寝転がるベッドとパソコン台をガンガンぶつけ、点滴の落ちる速度を測るのもベッドにもたれて行う。

「大きい病院の点滴は、こことは違って1時間だからね。3倍よ。頑張ってね」

と、昨日までの病院の看護師さんに言われていたことを思い出す。今から1時間ずっと、針先の違和感と不安を抱えたままかー。

読書会で借りた小説を、右手を駆使して読み耽る。というか、読んで、気を紛らわす。

点滴が終わり、ブザーを鳴らす。さっきの不慣れな娘とは違う、慣れた手つきの看護師さんが現れる。様々不安だった点を伝えておいた。私はそれで怒ったり文句を言ったりはしないけど、そういう患者さんもいるだろうから、あの娘に優しくご指導をお願いします、と付け加えて。

慣れた看護師さんは、失礼いたしましたごめんなさいねと、何度も謝ってくれた。私はいいんだって、それより、ご指導を、とその時は思っていたが、後から思い返すと、あの時に謝られてなかったら、あの病院、もう行きたくなくなるだろうなーと、さすがは慣れた看護師さんだなーと感心してしまった。

それからまたあてもなく、昨日も訪れたショッピングモールに足を運び、切れそうなスマホの充電を満タンにしつつ、これを記す。

彼や友人からいくつかのLINEが来てるみたいだから、これから、ひとつずつ返そうかな。

さーて、晩ご飯、どこで何食べようかな。